Famy

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Famyの活動

ACTIVITIES

2025.05.19

「助けたい」だけでは届かない

―これは敬意と問いかけの記録です。

私たちは2025年3月にアニマルクラブ石巻さんへお伺いしました。
Famyは「やさしいをすべての家族に届ける」ことを理念に活動しています。
その視点から見る現場では、長年動物の命と向き合ってきた方々の“やさしさ”の軌跡でした。

けれどその現場は
静かに、そして確実に疲弊していました。

それを見過ごさず、みなさんに共有し、問いかけること。
それが今、私たちにできるひとつの役割だと考えています。犬猫と家族として暮らすみなさんにぜひ伝えたいことです。

石巻の今:震災の記憶とともに
生きる施設

東日本大震災で多くの命が失われたこの地で、
動物と共に、安心・安全に暮らすという“適正な関係”
を根づかせようと、取り組んできた人々がいます。
それがアニマルクラブ石巻です。

まず被災された方々に対して深く追悼の意を表するとともに
私たちができる使命を全うしていきたいと思います。

アニマルクラブ石巻は、阿部智子さんがこの団体を立ち上げ、宮城県石巻市に拠点を置くNPO法人です。主に捨て犬や野良猫などの動物保護活動を行うボランティア団体です。

「不幸な動物を減らしたい」
という一人の中学生の思いから始まり、東日本大震災以前から動物の命と向き合ってきた団体。

震災当日、この団体でも犠牲になった命があったと伺いました。

2011年当時は、被災動物の保護や収容、記録の体制は全国的にも十分整っておらず、混乱の中での推計とはなりますが、震災によって亡くなったとされる犬の頭数は、以下の通りとされています。

それは、“いなかった”のではなく、“記録されなかった”ということ。

命の記録が残らないこともまた、ひとつの命が失われたかたちなのかもしれません。

心に深く突き刺さる、重い現実です。

当時は同行避難が浸透していなかったため、避難所運営において多くの混乱があったと聞きました。そのため現場に取り残された動物も多かったとのことです。非常に心が痛みます。

「犬は置いてきました」
「猫を迎えに戻れませんでした」

そうした声が、当時の新聞やネットニュースにも記録されています。

一時期人間だけが避難し取り残された動物が多くいたことから「動物天国」と揶揄された報道もありました。

人間は助けられたけれど、動物たちはそうではなかった。

これは、誰かの過ちではなく「仕組みの不備」だと私自身感じました。
そしてこの事実を知ることが、未来を変える一歩になるはずです。

今、私たちが学ぶべきこと。

それは、“同行避難”は“家族避難”であるべきだということ。

あたりまえに犬や猫と避難できる社会へ。あのときの後悔を、未来のやさしさに変えていくことが必要です。ぜひ同行避難に関してより詳しく記述したコラムの
アニパル仙台訪問記 「「あの日」を知る。そして今できること。」をご覧ください。

50年
走り続けた代表と
今の施設の姿

あの日、守られなかった命と守ろうとした人々

東日本大震災発生後、アニマルクラブ石巻では以下のような活動を積極的に行っていました。

  • 被災動物の保護活動
  • 被災者が避難所に入る際に連れて行けなかったペットの一時預かり
  • 避難所にペットを連れて来られなかった被災者へのサポート(犬猫用品の提供など)
  • 取り残された動物たちの保護と餌やりの活動

私も当時新聞記事で活動を目にし心を動かされたことを覚えています。

問われる支援の形 ― 継続できる仕組みはあるのか

「殺処分ゼロを掲げるより、町内の野良猫の避妊手術を進めることが、ずっと効率的で現実的だ」を理念として掲げ、去勢手術の徹底を推奨、実行されています。獣医師と連携し、手術を施設内で実施できる体制も整えてこられましたが、現在は人手不足によりすべての手術をこなすことは難しい状況です。

長年の動物保護活動は、高齢支援者の変化、経済状況の悪化、世代間の意識のずれなど、厳しい現実に直面していると私もこの視察を通して感じました。

代表の苦しみ、失望、疲弊。そういった気持ちがひしひしと伝わってきました。
長年の活動の中で、支援者の高齢化、経済的な困難、世代間での価値観の違いなど、厳しい現実が積み重なっています。
視察を通して、代表の阿部さんが抱える疲弊と葛藤が、痛いほど伝わってきました。

代表ご自身の体力的な限界を感じながらも、日本の動物福祉の遅れに対する長年の思いと、改善への希望を失っていないと伺いました。しかし一方で、ご自身の健康問題という新たな困難が加わり将来への不安と疲労感を滲ませていました。

支援制度はあるが、届かない現場の声
宮城県では、「飼い主のいない猫の不妊去勢事業への補助事業(宮城県獣医師会連携)」動物愛護事業推進の一環として実施されています。

しかしこの制度は、県民からの募金によって成り立つ仕組みであり、募金が集まらなければ支援は届きません。

さらに支援を受けるための書類作成や手続きに時間と労力がかかることも団体側にとって大きなハードルとなっています。支援を受けたいけど、資料を作る時間と余裕がない・・・といった苦しい声も聞こえてくる・・・

震災当時は多くの支援金があったというが
継続性がなかった事実が

この場所にはあった。

それでも変わらない社会
疲弊する現場

長年、この場所で本当に多くの命が救われてきたと感じます。
去勢手術の推進、周辺住民へのリテラシー向上の為の啓発、弁護士と連携したペット遺贈に関する書類作成のアシスト講座(※負担付遺贈 遺言書)など多くのことに取り組んで来られたとのこと。

しかし現場の老朽化と、保護猫の高齢化に伴う認知症の発症、ボランティアスタッフの高齢化は止められない。
(※負担付遺贈 遺言書⋯ペットの世話をする人に財産を遺贈する遺言で、お世話の費用として財産を遺贈、お世話をしてもらうことを約束するために遺言執行者を指定し、飼い主自身の死後にペットが困らないようにすること)

現在保護しているのは65匹の猫、3匹の犬。
そのうち譲渡対象としてサイトに掲載しているのは17匹のみ。
残りの子たちは、人馴れしていない・持病があるなどの理由で譲渡が難しい状態です。

確かに、凶暴すぎる、人馴れ出来てない状態で里親に出すのはリスキーであるが
これでは団体が赤字倒産してしまいます。

「譲渡活動ではなく、生涯飼育に近い日々」

代表が仰っていたこの言葉が現実なのだろう・・・

個人の想いだけで
社会は変わらない
「助けたい」だけでは届かない

アニマルクラブ石巻のような場所は、決して特別ではありません。
全国には、同じように疲弊しながら、それでも命を守ろうと踏みとどまっている団体が数多く存在しています。
その背景には、支援の仕組みの複雑さや、法整備の遅れもあると感じます。

熱意があるがゆえに、現場は「一人で、なんとか回す」ことが当たり前に…団体は次々に立ち上がる一方で、資源も人手も分散され、継続が難しい現実があるのです。

様々な保護犬猫募集のプラットフォームを参照した私の調べですが

  • 東京都:約139の団体
  • 宮城県:約30の団体

各地域の広さや状況に照らして、本当に“適正な団体数”が確保されていると言えるのでしょうか・・・

本当に必要なのは、「団体の数」ではなく、「つながりの仕組み」
想いを持つ人たちが孤立せず、正しい姿で活動を続けられる構造的な支援と運営の体制を築くべきだと強く思います。そのためには国の法律が変わらないとどうにも立ち行かないことも多くある。約50年戦ってきたアニマルクラブ石巻さんの想いは決して無駄にしてはいけない。

“やさしさ”は、想いだけでは続きません。
社会に根づかせるためには、“やさしさの仕組み化”が必要なのです。

Famy Chainの繋がりが大きな輪となり
社会を変える大きな力になるよう日々地道に、これからも歩みを止めず精力的に活動していきます。

アニマルクラブ石巻さんからのコメントです


可愛そうなら助けるために何ができるか考えて、実行することです。


長年の活動をぎゅっと詰め込んだ言葉が胸に刺さります。

筆:つむぎと麹の姉