東日本大震災から学ぶ
ペットとの同行避難について
2011年3月11日、未曾有の災害が東日本を襲いました。
東日本を襲った巨大地震が引き起こした大津波は、想像を遥かに超える広範囲に遡上し多くの人々の生活基盤を一瞬にして飲み込みました。
共に生きてきたかけがえのない家族たちにも、過酷な現実をもたらした「あの日」。
震災後明らかになったペット達が被った被害の大きさと
災害時における「動物との共生」という課題でした。
年月が経った今
繋げるべき対策と私たちにできることを改めて考えてみたいと思います。
仙台市動物管理センター
での取り組み
仙台市動物管理センター(アニパル仙台)を訪ね
その取り組みと「災害発生時動物愛護対策」
についてお話を伺いました。
アニパル仙台公式ホームページ(外部へ移動します)




■取り組み内容
- 狂犬病予防
- 動物愛護
- 適正飼養の推進
- 飼い主のマナー向上対策、終生飼養の推進
- 譲渡の取り組み
- 飼い猫の適正飼養及び飼い主のいない
猫の適正管理の推進 - 動物取扱業者に対する指導、特定動物の飼い主に対する指導
- 人と動物との良好な関係構築の推進
- 人材の育成、市民との連携
アニパル仙台 施設内の併設治療室で治療中のネコちゃん
アニパル仙台 施設内掲示板(ボランティア活動について)
アニパル仙台 施設内 写真展の様子
特に、飼い主のマナーが地域のトラブル発生に大きく影響することを重視し、適正飼養の指導に力を入れています。
また、譲渡活動においては、実績は少ないながらも譲渡希望者をつなぐ『わんにゃん命のリレーノート』の活用に取り組まれていらっしゃいます。
■「災害発生時動物愛護対策」について
東北地方沿岸部を襲った津波は多くのものを無に帰し、津波警報が解除された後も安全が確認されるまで立ち入り禁止措置が取られます。
大切な家族を探しにいくこともできません・・。

(引用参照:東日本大震災におけるペットの被災状況)
「あの日」守れなかった命
”被災地のペットの被災概況
東日本大震災では、地震の揺れに加え、沿岸域では津波により多くの人命が失われました が、それと共に多数のペットの命も犠牲になりました。犬については、狂犬病予防法に基づ く登録が義務付けられていることから、各自治体により震災発生以前の飼養頭数(登録頭数) が把握されていましたが、震災により死亡した頭数
については、青森県で少なくとも 31 頭、 岩手県で 602 頭、福島県では約 2,500 頭との報告がある
他は、不明とされています。
一方、 猫については犬のような登録制度がないため、いずれの自治体においても、震災以前の飼養 状況や震災による被災状況がほとんど分かっていません。”
(引用参照:東日本大震災におけるペットの被災状況)
仙台市内では、 震災直後から多くのペットが行方不明となり
失踪届が出され、飼い主の元に戻っていない事実が多く見られました。
従来の震災と違い「アニパル仙台」に収容される動物数が多くなかったことから、
やはり津波によって沿岸部の動物が犠牲になったと考えられています。
■東日本大震災時の避難所で起きたこと
運よく避難所にたどり着けた場合でもペットを飼養していない避難者との間で
ペットに関するトラブルが発生し飼育マナーが問題視されるケースも多かったようです。
- ペットの鳴き声や臭いなどの苦情
- ペットによる子供への危害の心配
- アレルギー体質の方への健康被害の懸念
- 他の避難者とのバランスを考慮せずに自分のペットに過剰な要望を主張する など
ペットは汚いものという認識で、避難先でも外のゴミ置き場付近がペットを連れている家族に
あてがわれたということもあったとのことです。。。
そんな経験からも「アニパル仙台」は、仙台市獣医師会との間に「震災時における動物救護活動に関する協定」を締結され、
飼い主の災害時の備えとし、ペットとの「同行避難」の重要性および避難所での過ごし方について啓発活動を行っていらっしゃいます。(参加述べ人数は譲渡会参加者の約5倍)
関心度の高さがうかがえる数字かと思います。
ペットとの「同行避難」について
「あの日」はいつ起こるか誰も予想できません。
その時、私たちは大切な家族を
どう守れば良いのでしょうか?
「今」できることは決して少なくありません。
東日本大震災や熊本地震などの大規模災害の経験を踏まえ、ペットとの「同行避難」や避難所での
ペットの飼養など、災害時におけるペット対策の重要性が認識されるようになり、環境省よりガイドラインが作成されています。
目的は、飼い主によるペットの適切な飼養を促進することや、自治体が飼い主を支援する体制の整備、関係機関との連携、広域支援のしくみづくりを含みます。
防災対応に係る体系図

(引用参照:「人とペットの災害対策ガイドライン」
飼い主とペットが安全に避難するには、 飼い主自身の安全の確保が大前提となります。
東日本大震災では、いったん 避難した飼い主がペットを避難させるために自宅に戻り、津波に巻き込まれたケースや、発災が平日の昼間だったことから、飼い主が自宅にいなかった
ケースもあります。災害が起こった時、飼い主がペットと一緒にいるとは限りません。また、人命を優先させるためにやむを得ずペットを自宅に残して避難せざるを得ない状況など、 不測の事態によりペットとはぐれてしまうケースもあると思います。
「大切な家族は、自分で守る」
■平常時にできる備え
- 住まいや飼養場所の防災対策
- ペットのしつけと健康管理
- 不妊・去勢処置
- ペットが行方不明にならないための対策(鑑札、迷子札、マイクロチップなどによる所有者明示)
- ペット用の避難用品や備蓄品の確保
- 避難所や避難ルートの確認などの準備
- 避難所以外の避難先やペットの預け先の確保
- 飼い主同士の共助のためのコミュニケーションと良好な関係の構築
- 避難訓練の参加と家族単位の避難訓練(シュミレーション)の実施
- 携行できるペット情報まとめ(治療記録、ワクチン接種歴など)
■災害時の対応
- 飼い主自身とペットの安全確保
- ペットとの同行避難
- 避難所や応急仮設住宅におけるペットの適正飼養
- 避難所や応急仮設住宅でのマナー遵守と衛生管理
- 必要な物資はできる限り飼い主が用意する
災害という非常時にあっても
ペットをめぐるトラブルを最小化させ
動物に対して多様な価値観を有する人々がともに災害を乗り越えられるよう支援する。
被災ペットへの対応は、災害の種類や規模、発生した季節やその地域における動物救護体制の整備状況などによって異なり、各自治体が取り得る体制は多様なものとなります。
そのためのガイドラインです。
(引用参照:「人とペットの災害対策ガイドライン」)
東日本大震災の初期
ペットのための救援物資を運ぶ車両が
緊急車両として認められず、深刻なガソリン不足も重なり
必要な物資が飼い主の元へ
すぐに届かなかったという事例がありました。
人間のための救援物資も、発災直後は混乱の中でなかなかスムーズに届かないことがあります。
ましてや、ペットのための物資は、どうしても後回しになってしまう
可能性が高いと言わざるを得ません。
「大切な家族は、自分で守る」という覚悟をもって準備することが大切です。
避難先でペットと一緒に過ごせますか?
関東近隣での取り組みについて調べてみました。
各都道府県では、「同行避難」に関する指針が定められており、多くの自治体では、災害時にペットと一緒に避難する「同行避難」を原則、または推奨しています。
ただし、避難所では「人」と「動物」の居住空間が分けられることが一般的です。
ペットに関するルールは避難所ごとに異なるため
災害時に備えて事前に地域の避難所の情報を確認し
ペット用の非常持ち出し品(引用:神奈川県ペットの災害対策)についても用意することが重要となります。
熊本地震での例
(引用参照 :「人とペットの災害対策ガイドライン」)
ペットと一緒に避難する「同行避難」を前提としながらも
ペットの為の物資は飼い主が用意すること
居住空間は別であること
避難先のペットの体調管理は飼い主に責任があること
などを考えると改めて個人での対応には限界があるのではないかと感じます。
ガイドラインも作成されていますが、自治体等が飼い主への支援体制や、負傷動物等の救護体制を整備していただけることは、飼い主だけではなく、被災者全体が安心して安全に避難するためにも重要だと感じます。
Famyの想い
人と共に犬も猫も暮らしやすい街であってほしい。。
そのためにも 避難所におけるペット「同行避難」のルールや環境の 整備が必要です。
こうした防災意識の共有や取り組みは
大切な家族の命を守るだけでなく、地域の連帯感をも高めていくことと思います。
わたしたちは、一人ひとりの行動が
大切な命を守る力になると信じています。
ひとつひとつのつながりが
大きな輪となるように
ペットとの「同行避難」について、考えることは、命と向き合うことそのもの。
このコラムが、皆さんにとって新たな気づきや行動につながれば嬉しく思います。
ペットとの「同行避難」について、これまで意識してこられなかった方も
ぜひこの機会に考えてみてはいかがでしょうか。
アニパル仙台の方よりコメントをいただきました。
ペットを守ること
いざというとき、避難所で受け入れてもらうために日ごろからの備えが大切です。ペットはもちろん周辺社会に対して責任があることを自覚して生活しましょう。
著 ぷーたろうの母